最近の判例(リツイート事件最高裁判決)の紹介
2020.08.24 (月)
Twitterにおけるとあるリツイートが著作者人格権を侵害していると認定された事例
最高裁判所第三小法廷令和2年7月21日判決
※ 裁判所のページのリンクを貼っておきますので、判決原文等はこちらでご覧ください。
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89597
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/597/089597_hanrei.pdf
当事務所がツイッターアカウントを開設したこともあり、この判例を紹介させて頂きます。なお、当事務所のツイッターは、以下のリンクからご覧頂くか、ツイッターで「松本合同法律事務所」と検索してください。
https://twitter.com/matsumotogodo
1 事案の概要
この最高裁判例で判断の対象となったのは、ある人(被上告人)の著作物である写真の画像をTwitter上に無断で投稿した行為…ではなく、そのツイートをリツイートする行為でした。
被上告人は、これらの行為が著作権や著作者人格権を侵害するものだとして、Twitter(米国法人。上告人)に対し、プロバイダ責任制限法にもとづいて、無断投稿したユーザー、リツイートしたユーザーの発信者情報開示を求めていました。
無断投稿された写真(画像)には、隅に「©︎」マーク及び被上告人の氏名をアルファベッド表記した文字等(判例では、これを「本件氏名表示部分」としています。)が付加されていました。
そして、問題のリツイートがされたことにより、不特定の人が閲覧できるアカウントのタイムラインに、先程の写真(画像)がリツイート記事の一部として表示されるようになりました。
また、リツイート記事に表示された写真(画像)は、ツイッターのシステムの仕様により自動的に上部及び下部がトリミング(一部切除)された形となっており、そのため、本件氏名表示部分が表示されなくなっていました。
ただし、リツイート記事中の表示画像をクリックすれば、本件氏名表示部分も見ることができるという状況でした。
そのため、主に、このリツイートが著作者人格権(特に氏名表示権)を侵害したと評価できるのか、リツイートをした人は著作者名を表示したと言えないのか、という点が問題となりました。
2 最高裁の判断
そして、最高裁は、この点につき、
• リツイート記事中の表示画像をクリックすれば、本件氏名表示部分がある写真(画像)を見ることができるとしても、リツイートをした人が著作者名を表示したことにならない
• 本件のリツイートをした人は、リツイートにより氏名表示権を侵害したものというべきである
と判断しました(以上は要約であり、判決原文をそのまま引用したものではありませんので、ご注意ください。以下に記載する要約も同様です)。
この判断の理由は、要約すると、以下のとおりです。
• 本件のリツイートをした人は、ツイッターのシステムの仕様(本件氏名表示部分が表示されない原因となったトリミングの仕様)を認識しているか否かにかかわらず、そのようなシステムを利用してリツイートを行なっており、本件氏名表示部分の非表示は、客観的には、リツイートした人の行為によって現実に生ずるに至ったことが明らか。
• 本件のリツイートをした人は、リツイートによって本件の写真(画像)を表示したウェブページにおいて、他に写真の著作者名の表示をしなかった。
• リツイート記事中の表示画像をクリックすれば、本件氏名表示部分も見ることができるが、それは、その表示画像が表示されているウェブページとは別個のウェブページに本件氏名表示部分があるというにとどまる。
• リツイート記事を閲覧するユーザーが表示画像を通常クリックするといえるような事情もうかがわれない
3 反対意見
なお、この判決には、一人の裁判官の反対意見が付されており、その要旨は以下のとおりです(以下は要約であり、反対意見の原文をそのまま引用したものではありませんので、ご注意ください)。
• トリミング及びそれによる本件氏名表示部分の非表示は、ツイッターのシステムの仕様によるものであって、こうした事態が生ずるような画像表示の仕方を決定したのは、ツイッター社である。これに対し、リツイートした人は、リツイートにあたり、元ツイートに掲載された画像を削除したり、その表示の仕方を変更したりする余地はなかった。
• 本件で写真(画像)の無断アップロードをしたのは、リツイートした人ではなく元ツイートを投稿した人である。
• 多数意見に従えば、あらゆるツイート画像について、これをリツイートしようとする者は、その出所や著作者の同意等について逐一調査、確認しなければならないことになるが、これは、ツイッター利用者に大きな負担を強いるものであるといわざるを得ず、権利侵害の判断を直ちにすることが困難な場合にはリツイート自体を差し控えるほかないことになるなどの事態をもたらしかねない。
4 終わりに
多数意見と反対意見を比較対照してみると、各意見では、そもそも、本件氏名表示部分の非表示がリツイートした人の行為によって生じたものと言えるか、という点の考え方が違うのだと考えられます。
いずれにしても、ツイッターのシステムの仕様による画像のトリミングであっても、リツイートによる著作者人格権の侵害と評価されるリスクがあるということになりますので、トラブルに巻き込まれないようリツイートにも注意する必要があります。
私どもの事務所では、このようなインターネット上のトラブルに関する相談も受け付けておりますので、お悩み事がございましたら、まずはお電話でお問い合わせ下さい。
▼シェアをお願い致します!▼
▼『最近の判例(リツイート事件最高裁判決)の紹介』の前後の投稿はこちら▼